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Ballet~ときどき美容と食い意地~

~K-BALLET COMPANY マダム・バタフライ~
2019-10-20 13:34

大学のテスト準備(台風で中止となりました)などで、ばたばたしておりましたが
Kバレエのマダム・バタフライを観た感想をまとめておきたく。


マダム・バタフライ
結論として、素晴らしい舞台でした。
君が代からの始まりに、鳥肌…!


海軍
海軍やアメリカの女の子達の踊りは、明るく勇ましく。
一幕目の明るさがあるからこそ、つづく二幕目ラストが益々ドラマティカルになっています。


矢内千夏さん(蝶々夫人)
マダム・バタフライ2

ええと…、体重はリンゴ3つ分なのかな(キティちゃん?)。

最初に登場した時の軽やかさよ…!
ひらひらと舞い踊る若い蝶々さんには、まだ人間社会が持つしがらみという重さは無く。
武家の娘としてのたしなみはありつつも、まだ恋を知らない無邪気な少女。
出会いの場面では「とても高いお鼻なのね?」とでも言いたげに、ピンカートンの鼻先にそっと触れます。

そこから、ピンカートンと恋に落ち。
異国から来た、大好きな旦那様に生涯を誓い。
懐剣を懐に忍ばせ、覚悟を決めて嫁ぎ、周囲の反対を押し切って改宗までしてしまう新妻。

「駒鳥が、巣を作るころには戻るよ。」という、ピンカートンの言葉を信じて待ち続ける貞節な妻。
最愛の旦那様との一粒種である息子を愛する母。

そして、ラスト近くの白装束。
能のような、静かに鬼気迫る踊りは尊厳や誇りを持ち続ける女性。

全てを踊り、演じ切りました。
まだ思い出すと涙が出てしまいます。

矢内さん…。
お、恐ろしい子・・・!



堀内將平さん(ピンカートン)
堀内さん矢内さん1
※こちらは撮影OKのお時間に私が撮った、ぶれた写真でごめんなさい。。。

ファンになったのは、コールドのなかでもソロのようにのびのびと踊られており
お手本のように丁寧な踊りをなさるなと、惹きつけられたことがきっかけでした。

え~。
従来のピンカートン。
大嫌いでした。(皆そうですよね?ね?)

素敵な堀内さんが、大嫌いなピンカートンを演じるとあって心中複雑でしたが
やはり新たなピンカートンを踊ってくださいました。

これまでのピンカートンへの印象は、浅薄で、人の真心を感じ取る力もない、上っ面で行き当たりばったりのクソ野郎。

でしたが。

結婚式のシーンは初々しく。
若い二人のパドドゥは、結ばれた喜びに満ちていました。




マダム・バタフライ結婚式
このお写真のように蝶々さんが正座をして、深々と頭を下げた後。
慌てて、自分も真似をして正座をし、ぎこちないお辞儀をするピンカートン。
会場のあちこちから、くすくすと笑いがあがっていました。

こういう笑いのエッセンスがあるからこそ、後にやってくる悲しみがより辛く痛々しい。

ラスト近くで蝶々さんに再会して苦悩するピンカートンには
これまで持っていた軽薄という言葉がそぐわないと感じてしまい…。

ピンカートンなりに祖国にいる恋人ケイトに心を残していつつも、異国である日本で出会った可憐な蝶々さんを愛してしまった。
人の心は、善悪や常識だけで整理出来るなら簡単で、そうはいかないから人なんでしょうよね。

誰かを思うさま憎めたら、それはそれで快く。
でも、そうはいかないから苦しくて難しい。

頭と心は、しばしば分離してしまう。
人は矛盾の生き物ですね。

悪役、ピンカートンではなく。
人間、ピンカートンを見せていただきました。

しなやかな背中、浮遊感のある大きいジャンプ、安定感のあるリフト。爪先まで手を抜かない繊細さ。
どのような役どころでも、どこか清潔感があり、品のある踊りをされるのが魅力です。

まあ・・・。
あれです。

しょせん、男女のことは当事者にしか分からない時間、気持ち、出来事があって。
外野が口を出すこっちゃないですね。
(いやまあ、舞台なんですけど…!)



中村祥子さん(花魁)
花魁

美神。
女神。
竜宮城の乙姫様。
人ならざるもの。

祥子さんの美しすぎる花魁を見て、そんな言葉が浮かんでは消え。
一瞬の夢と引き換えに、高額な金子を得る花魁を演じるにふさわしい美しさ。
(ちなみに、花魁独特のあの歩き方は地域によって外八文字と内八文字に分かれるようですね。知りませんでした!)

花魁が本当にいた時代では、銀幕スターのようなものだったとどこかで目にしました。
庶民が花魁と一夜を共にできるわけではなく、限られた富裕層だけが手にできる夢。

遠くから、もっともっと花魁を見つめていたい。
と、当時の庶民の気持ちになりながらただただ賛美の目を向ける私。

祥子さんは、まだ無邪気な少女である蝶々夫人との対比となる
女の中の女、花魁という役どころをポアントで見事に演じていらっしゃいました。



荒井祐子さん(スズキ)
荒井祐子さん
ちゃきちゃきと場を仕切るスズキは、どこかしら婀娜っぽく。
スズキも昔は人気のある芸妓としてならしていたのかも、なんて想像が膨らみました。
あんな美しいポアントワークをされるのに、和なんですよね。
踊るお姿を拝見する度、素晴らしい技術と演技力にため息が出ます。



小林美奈さん(ケイト)
小林美奈さんの踊りは、いきいきとして活力があり華やいでいます。
今回、堀内さんの苦悩するピンカートンを憎めない分、蝶々さんから子を奪う
残酷な役割を、一手に引き受けてくれた感がありました。

一幕で恋人ピンカートンを見送る明るくぴちぴちした女の子から転じて
二幕で蝶々さんと対面し、子供を引き取ることを告げた時の天を指さすポーズをなさった瞬間は
こんな冷酷な表情もなさるのだな、と驚きました。

そりゃそうですよね…。
ケイトもピンカートンを送り出した時には、しばしの別れの寂しさを感じつつも後の結婚生活を夢見てわくわくしていたでしょう。
それが、ずいぶん時間が経った後に裏切られていたことが発覚した。

自分の旦那が、実は遠い異国で結婚した上に子供までもうけていたら…(そして自分には子供がいなければ…)。
明るく可愛い女の子であったケイトだとて、般若(アメリカ女性ですが)にもなるでしょう。
優しい大らかな女性も、蝶々さんから子供を奪う正妻も、どちらもケイトであって。
ここでもまた、善悪ではくくれない人間の二面性を見ることができました。
子供への優しい表情だけは、救いでした。



遅沢佑介さん(ボンゾウ)
古き良き時代のサムライ。
肝の据わった日本男児の心意気ぞ、ここにあり!

武術の達人の演武のごとき動きは、怖かったです。
「バレエダンサーとは、喧嘩をするな」という大山倍達さんの名言を思い出しました。

居合に使う、光る真剣のような鋭さと気迫。
研ぎ澄まされた、何一つ無駄のない動きに魅了されました。



石橋奨也さん(ゴロー)
小気味よく、くるくると舞台上を動き回るゴロー。
石橋さん、死霊の恋でのストイックな神父のイメージが強かったのですが。
色々な役を踊ることができる方なのですね。



山本雅也さん(ヤマドリ)
格式のある公爵(蝶々さんにも、無理強いするではないですし)という役どころ、山本さんにぴったりの役どころでした。
別日では、ピンカートンもつとめていらっしゃったので、次回は是非拝見してみたいです。



井坂さん、杉野さん
コールドのなかでも、やはり光を放つようにひと際目立っていらっしゃいました。
わざわざお2人のお姿を探している訳ではなく、気づくと目がいっていて見つけられるんですよね。
踊る、ということの意味をいつも考えさせられるお2人です。



栗山さん、西口さん
ピンカートンの同僚の海軍士官、黒子をお2人が演じていらっしゃいました。
どちらも男性ならではの見ごたえのある踊りでしたが、特に黒子が踊るというのが斬新でした!
お2人とも手足が長いので、黒づくめでお顔を隠していらしても、大きい動きには華があって素敵でした。

他にもおひとりおひとり、きちんとその時代の人物になっていらっしゃいました。
誰一人脇役でない、演じる役柄が伝わるような、いきいきとしたKバレエのコールドはいつも魅力的です。

今回が世界初演でしたので、各幕更なる発展がありそうな予感さえします。
いつかの再公演を、今から楽しみにしております。



そして。
熊川哲也さん(芸術監督)
バレエダンサーとして、まごうことなき天才。
ですが、ご本人が踊らずとも、バレエの申し子であることは変わらないのですね。

大学の課題で、シェイクスピアの主人公にまつわる英論文の翻訳が出たことがあり
その中に「悲劇とそれに先立つ主人公の栄光との対照が、更に悲劇を悲劇たらしめる」
というような一文がありました。

陰と陽、ケとハレ、誠実と裏切り、希望と絶望、夢と現実。
今回の舞台の端々で、そのようなコントラストを感じさせられました。
それらが人の心を惹きつけ、登場人物の感情が際立ちます。

蝶々夫人を創り出した熊川さん、やはり素晴らしい方です。

東京文化会館の公演は、一部が台風19号と重なってしまいましたが
主催側では公演日の振替や中止も、いち早く対応されておりました。

芸術監督である熊川さんを筆頭に、ダンサーさま、カンパニーの皆さま、会場その他関連された皆さまも
長らく準備に多くのものを注いでこられたことでしょうから、お辛かったでしょうね・・・。
ご英断だったと思います。

今日の東京は秋晴れで爽やか。

おりしも本日は、ミスターラグビーである平尾誠二さんの命日。
私はテレビで日本のラグビーを応援します。

皆さま、どうか良き午後をお過ごしください。
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